農業時計とこれからの話
僕は今、39歳です。
もうすぐ40代になります。
最近、これからの10年間について考えることが増えました。
20代には、20代の仕事がある。
30代には、30代の仕事がある。
じゃあ、40代には、40代の仕事があるんじゃないかって。
そして50歳になったとき、僕は自分自身に何を残せているんだろう。
今日は、これまでの仕事を少し振り返りながら、これからの10年間について話してみたいと思います。
■ 20代は、規模を大きくすることが楽しかった。
僕はもともと、葉物野菜をつくる農家でした。
20代の頃は、とにかくがむしゃらに働いていました。
少しずつ規模を拡大して、売上もどんどん増えていきました。
今振り返ると、当時の僕は、規模を大きくしていくこと自体が楽しかったんだと思います。
自分が頑張った分だけ、事業が大きくなっていく。
できることが増えて、次はもっと大きくしたいと思う。
そうやって、夢中になって働いていました。
休みは週に1回くらいあったと思うんですけど、実際には休みらしい休みもありませんでした。
でも、当時は仕事が楽しかったんですよね。
ただ、規模が大きくなるにつれて、少しずつ気になることも出てきました。
売上は増えているのに、利益は同じようには増えない。
設備を増やせば費用もかかるし、人手が必要になれば人件費も増える。
規模を大きくすることと、利益を増やすことは、必ずしも同じではありませんでした。
■ 32歳。利益率3%。
32歳のとき、葉物野菜の利益率が3%になりました。
減価償却費がかさんで、利益を圧迫していた部分もあったと思います。
でも、その数字を見て、自分の将来が心配になったんです。
これだけ働いて、売上も増えている。
それなのに、利益が思うように残らない。
これから先、もっと規模を大きくしていけば、もっと豊かになれるんだろうか。
設備を増やして、面積を広げて、さらに忙しくなる。
それを40代、50代になっても続けていくのか。
もちろん、葉物野菜が悪いわけではありません。
ただ、当時の僕の経営では、このまま続けていった先に、自分が望む未来を描けなくなっていました。
新しいことに挑戦するのが怖かったわけではありません。
むしろ、今のまま続けていくことのほうが怖かったんです。
「そもそも、僕は何がしたいんだろう」
32歳になって、改めて自分の仕事について考えるようになりました。
■ お客さんから選ばれる農園をつくりたかった。
葉物野菜は、基本的に市場の相場によって価格が決まります。
一生懸命いいものをつくっても、その努力が必ずしも販売価格に反映されるわけではありません。
僕は、自分たちがつくったものの価値を、お客さんに直接感じてもらえる仕事がしたかったんです。
「この農園のものが欲しい」
「ここに行きたい」
そうやって、お客さんから選ばれる商品や農園をつくりたかった。
もともと観光農園には魅力を感じていました。
人が楽しむ場所であること。
そして、お客さんの顔が見えること。
自分が育てた果物を、お客さんが目の前で食べてくれる。
そんな仕事に挑戦してみたいと思いました。
いちごの栽培を勉強して、事業計画を立てて、投資をしました。
もし、葉物野菜で十分な利益が出ていたら、観光農園を始めていなかったかもしれません。
いろんな経験や思いが重なって、今のモグベリーにつながっているんだと思います。
■ 祖父のような人格でありたい。
僕の祖父も農業をしていました。
僕は、そんな祖父の背中を見て育ちました。
祖父は、誰に対しても公平な人でした。
自分の利益のためだけに動くような人ではなくて、見返りも求めない。
僕は、そんな祖父の生き方に、ずっと憧れていました。
自分も、いつかあんな人になりたい。
その気持ちは、今でも変わりません。
32歳のとき、僕はもっと利益を出したいと思っていました。
そして今も、利益を出すことは経営者として大切だと思っています。
でも、利益を自分だけのものにしたいわけではありません。
一緒に働いてくれるスタッフに還元したい。
設備を新しくして、働きやすい環境をつくりたい。
新しい事業にも挑戦したい。
自分が生み出した利益が、次の誰かの仕事や喜びにつながっていく。
そんな経営ができたらいいなと思っています。
■ 30代は、農業にスパイスを加えた。
振り返ってみると、20代はがむしゃらに働く10年間でした。
そして30代は、そこに自分なりのスパイスを加えてきた10年間だったと思います。
葉物野菜から、いちごの観光農園へ。
そして今は、ぶどうにも挑戦しています。
果物をつくるだけではなくて、果物を通じて人が楽しめる場所をつくる。
少しずつ、自分がやりたい農業の形が見えてきました。
今は、一緒に農園の未来を考えてくれる仲間もいます。
経営を相談できる人。
プラットフォームをつくる人。
建物や設備をつくる人。
それぞれ違う専門性を持った人たちと話していると、僕一人では思いつかなかったことが生まれてきます。
自分が思い描いていた農園が、仲間の知識や技術によって、もっと面白いものになっていく。
今は、そんな時間も楽しいんです。
■ 40代は、何を残す10年間にするのか。
じゃあ、40代は何をするんだろう。
正直、まだはっきりとは分からないんですよね。
でも、これまでやってきたことを、もう少し形にしていきたいなとは思っています。
いちごも、ぶどうも、これからつくる施設も。
まだまだ、やりたいことはたくさんあります。
ただ、20代の頃みたいに、自分ががむしゃらに働いて、どんどん規模を大きくしていく、という感じではないんだろうなと思っています。
今は、一緒に働いてくれるスタッフもいるし、農園のこれからを一緒に考えてくれる仲間もいます。
せっかくみんなでつくっている農園なので、ちゃんと利益を出して、スタッフにも還元していきたいんです。
新しい設備を入れたり、また次の面白いことに挑戦したり。
そうやって、少しずつ、いい農園にしていけたらいいなと思っています。
そして、50歳になったとき。
自分がつくった農園が、誰かに必要とされていたら嬉しいですね。
毎年、楽しみに来てくれるお客さんがいて。
ここで働き続けたいと思ってくれるスタッフがいて。
「モグベリーがあってよかったな」って思ってくれる人がいる。
そんな農園になっていたら、この10年間、頑張ってきてよかったなって思える気がします。
これからも、こんなふうに自分の考えを少しずつ言葉にしながら、農園づくりを続けていきたいと思います。
